マサリク大学(Masaryk University)は、チェコ第二の都市・ブルノにある名門公立総合大学です。中央ヨーロッパでも高い研究力を持つ、リベラルな名門校として知られます。今回はマサリク大学について ご紹介します。
歴史ある学園都市・ブルノ
ブルノは人口約40万人のチェコの第二の都市です。国の南東部に位置し、ウィーンやブダペストへのアクセスも良好な中欧の交通の要衝で、豊かな文化遺産が残っています。
チェコを代表する学園都市としても知られ、人口の約1/5 ~ 1/4が学生と言われています。このため、街全体が若者向けに最適化されており、カフェ、バー、コワーキングスペース、ナイトクラブがいたるところにあります。
ブルノはITやバイオテクノロジー、精密機器(電子顕微鏡)産業の世界的集積地です。IBM、Red Hat、AT&Tといったグローバルハイテク企業や多くのスタートアップが拠点を置いており、マサリク大学でITやビジネスを学ぶ留学生にとって、こうしたグローバル企業がすぐ身近にある環境は、在学中のインターンシップや卒業後の現地就職を狙う上で大きなアドバンテージとなります。
マサリク大学の特徴
マサリク大学は、カレル大学と並ぶチェコ屈指の名門大学です。
重厚な「伝統」を誇るプラハ・カレル大学に対し、マサリク大学は「革新と最先端」の象徴として語られることが多く、「伝統に縛られることなく、デジタル化や近代インフラへの投資が最も積極的に進められている革新的な大学」というイメージで語られることが多いようです。
マサリク大学は、チェコ研究力強化プロジェクトの1つであるCEITEC(中欧工科研究所)の中心大学でもあります。CEITECは、分子医学、構造生物学、脳科学、ナノテクノロジー・先端材料の研究で知られ、CEITECの成果によって、マサリク大学の国際的な評価も大きく上がりました。
デジタル化も他のチェコの大学に比べて進んでおり、大学独自の統合情報システム(IS MU)は、履修、試験、各種申請、学位論文の剽窃(ひょうせつ)チェックにいたるまで高度にデジタル化されており、ヨーロッパの教育界で数々の賞を受賞しています。
マサリク大学の歴史
マサリク大学は、1918年にチェコスロバキアが独立国家として誕生した翌年の1919年(大正8年)に設立されました。大学は初代大統領マサリクの名を冠して「マサリク大学」と命名され、独立国家の「民主主義と国民形成の精神」を体現する機関として出発しました。設立当初の学部は法学・医学・理学・文学の4学部です。
ナチス・ドイツによるチェコスロバキア占領を受けて、大学は完全に閉鎖されました。戦後、大学は再開されましたが、共産主義体制の下ではアカデミックな自由は著しく制限されました。
1989年に共産主義体制が崩壊し、大学は自由を取り戻しました。翌1990年からは、経済学・行政学部(1990年)、情報学部(1994年)、社会科学部(1998年)、スポーツ学部(2002年)が次々と設立され、総合大学として飛躍的な発展を遂げました。2010年代にCEITECが本格稼働し、マサリク大学は大きく発展しました。
マサリク大学の学部
マサリク大学の10学部は以下の通りです。
法学部(Faculty of Law)、医学部(Faculty of Medicine)、理学部(Faculty of Science)、文学部・人文学部(Faculty of Arts)、教育学部(Faculty of Education)、経済・行政学部(Faculty of Economics and Administration)、情報学部(Faculty of Informatics)、社会科学部(Faculty of Social Studies)、スポーツ学部(Faculty of Sports Studies)、薬学部(Faculty of Pharmacy)
10ある学部のうち、法学部、医学部、理学部、情報学部は特に有名です。
法学部は、チェコ国内の司法・行政界で圧倒的な存在感を持つ、チェコ随一とも言われる名門法学部です。医学部は最新のCEITEC研究所・大学病院との連携で知られます。また、情報学部はチェコのIT産業の中心地ブルノにあって、サイバーセキュリティ・AIの分野で欧州でも注目されています。
EduRankでは合格率は約36%と推定されています。授業の難易度は学部によって異なりますが、医学部・法学部・薬学部は非常にハードで知られており、入学後の勉強量も多いことで知られています。「教授陣は非常に協力的で親切だが、課題や試験の質は高く、自立したスタディプラン(毎学期一定以上のECTS単位取得必須)が求められるため、決して楽ではない」といった口コミもあります。
学生全体の20%以上を外国籍が占めるため、非常にオープンでダイナミックなコミュニティとして評価する声も多いようです。また、「チェコ語ができなくても、英語のサポート体制やデジタルシステム(IS MU)が機能していて、留学生にとって利用しやすい先進的な大学」という口コミが定着しています。
マサリク大学の英語コース
医学系・神学系以外のマサリク大学の学部生向け英語コースは以下の11コースです。(2026年5月31日時点。)他の大学同様、修士課程の方が英語コースは充実しています。
・生物学と生化学(Biology and Biochemistry)
・データ分析(Data Analytics)
・文化・メディア・パフォーミングアーツ(Culture, Media and Performative Arts)
・英語・英米文学(English Language and Literature)
・多様性とインクルージョンのための教育(Education for Diversity and Inclusion)
・教育のための英語(English Language for Education)
・ビジネスマネジメントと財務(Business Management and Finance)
・経済学と公共政策(Economics and Public Policy)
・グローバル課題:社会・政治・環境(Global Challenges: Society, Politics, Environment)
・国際関係とヨーロッパ政治(International Relations and European Politics)
・政治・メディア・コミュニケーション(Politics, Media, and Communication)
ポーランドの大学との比較
マサリク大学は、大学の位置づけとしては、ポーランドのヤギェウォ大学に似ています。(リンク先は、当ブログのヤギェウォ大学の記事です。)
ヤギェウォ大学はマサリク大学に比べて歴史がある反面、マサリク大学に比べると英語コースが少なめで、CEITECのように大学と研究機関が一体化した大型研究拠点は、ポーランドでは比較的少数です。
カレル大学に比べて学士向けの英語コースが11コースと豊富で、内容も実務や現代のニーズに即したものが多いため、その柔軟性は「ポーランドの大学の良さ」に通じるものがあります。
ポーランドの大学でCEITECのような研究機関を持っている大学はないので、生物関連の大学院に進学したいと考えている方にはおすすめです。








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